期待が膨らむ第43回「招待ピアノ」
出演者の“お披露目”ミニ・コンサートを開催
2025年11月14日 (金)
取材・文: 長井進之介
写真:藤本史昭
40年以上にわたる歴史をもち、これまで約200名の才能あふれる若手ピアニストを紹介してきた「横浜市招待国際ピアノ演奏会」。第43回は、サン・ジッタカーン(タイ)にジャン=ポール・ガスパリアン(フランス)、ヨナス・アウミラー(ドイツ)、そして田所光之マルセル(日本/フランス)の4名が出演。11月16日(日)の本公演を前に、演奏者たちの演奏と人柄にいちはやく触れられるプレ・イベント「ミニ・コンサート」が11月13日(木)、クイーンズスクエア横浜1F・クイーンズサークルで開催された。
まずは企画委員長であるピアニストの海老彰子から概要の説明と共に、今回の演奏者について次のように語られた。
「横浜市、そしてヤマハ株式会社の絶大な支援により成り立っている演奏会です。演奏会当日は、すばらしい空間とピアノの音色で、世界各国から集まった才能あふれる4名の演奏をお楽しみください。そしてみなさまにはぜひ本当に素晴らしいピアノの名手である彼らのことを、これからも覚えておいていただきたいです。今回彼らをご紹介できることを本当にうれしく思います。私自身も個性豊かな彼らの演奏がどのように横浜みなとみらいホールの大ホールに響くのかが楽しみです。当日は恒例となっている出演者による連弾もございますので、そちらにもどうぞご期待ください」

続いて4名のピアニストの紹介とインタビューが行われた。
まずは「横浜市招待国際ピアノ演奏会」史上はじめてとなるタイ出身の出演者、サン・ジッタカーンだ。
「タイでクラシック音楽がどのように親しまれているのか」という問いに対し、「タイはクラシック音楽が盛んになって50年ほど。ピアノを学習する人も増え、いまではコンサートをどのように広めていくかが課題で、最近では『ハリー・ポッター』のミュージカルとマーラーの交響曲のコンサートのセット販売といった試みなども行われています」
今回が初来日となるジャン=ポール・ガスパリアンは、日本への想いを語った。
「フランス人は日本とその文化にとても親しんでおり、映画や詩などたくさんのアートから影響を受けています。私自身も伝統と近代の融合などに関心を持っています。本日もこれだけたくさんの方にお集まりいただき、とてもうれしいです。当日は私の音楽をみなさまに共有できることが楽しみです」
今年のショパン国際ピアノコンクールに出場し話題を呼んだヨナス・アウミラーは、すでに日本のファンも多い。
「大好きな日本で今回も演奏できることに喜びを感じています。日本はホールの音響、楽器のすばらしさはもちろん、観客の皆様がとても耳を澄まして集中力をもって聴いてくださることに毎回感動しています。そして日本食も楽しみにしているところです!」
最後は今年6月にCDデビューを果たした田所光之マルセル。すでに出演者同士で交流もあったようだ。
「ジッタカーンさんとお会いするのは本日が初めてでしたが、ジャン=ポールさんとはフランスで交流の機会がありました。アウミラーさんとはSNSで以前からいろいろなやりとりをしています。時間があれば、みなさんに日本食を食べていただく時間を作りたいですね」
それぞれの人柄が伝わった後には、ヤマハのフラッグシップモデル「CFX」を使用し、4名の演奏披露が行われた。
サン・ジッタカーンはラフマニノフの《14の歌》から〈ヴォカリーズ〉を披露。のびやかな音色で見事に“ピアノで歌う”ことを実現。また厚い和音を弾いたときもそれぞれの音が見事に分離し、ハーモニーの微細な変化が丁寧に行われていた。当日はシューマンの作品でどのような物語を描き出してくれるか楽しみである。
ジャン=ポール・ガスパリアンはドビュッシーの《版画》から〈塔〉を演奏。オープンスペースという開放的な空間のなかに見事に自分の音色を響き渡らせていき、空気感を作り出していた。音でさまざまなものがまるで見えるかのように描き出した作品を書いたドビュッシーだが、その音楽の魅力を最大限に発揮した演奏であった。
ヨナス・アウミラーはショパンのワルツ第1番《華麗なる大円舞曲》を透明感のある音色で優雅に奏でた。ワルツとしての軽やかさを常に保ちつつ、そのなかにショパンのさまざまな感情の動きを感じさせるデリケートな演奏であった。
田所光之マルセルはリストの《愛の夢》第1番を選曲。豊かな音色を楽器から響かせ、リストならではのスケールの大きな演奏を聞かせた。楽器の鳴らし方、空間の把握に長けたピアニストである。

演奏会終了後には一人ずつ当日に向けての意気込みも語った。
ジッタカーン「シューマンの作品に対するリスペクトを、日本の観客のみなさんと共有できることを楽しみにしています」
ガスパリアン「日本で初めてコンサートに出演できることがとても楽しみです。ドビュッシーにババジャニアン、リスト、それぞれ全く違う魅力があるのでそれをお届けしたいです」
アウミラー「この数か月愛情深く向き合ったショパンの音楽をみなさまに届けられること、素晴らしいピアニストのみなさんと一緒の舞台に立てることがとてもうれしいです」
田所「当日演奏する《超絶技巧練習曲》は技巧的なイメージですが、それよりも彼の音楽性や精神性をお楽しみいただきたいです」
最後の囲み取材では全員がヤマハ最高峰のコンサートグランドピアノ「CFX」の音色の美しさと変化の多彩さ、自らの可能性を広げてくれることについて言及。個性豊かな4名のピアニストがどのような演奏を届けてくれるか、改めて期待が膨らむミニ・コンサートとなった。

第43回横浜市招待国際ピアノ演奏会
日時:2025年11月16日(日)15:00開演(14:20開場)
会場:横浜みなとみらいホール 大ホール
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