パイプオルガン "Lucy"


大ホール舞台正面に設置されているパイプオルガンは、アメリカのC. B. フィスク社製。ホンジュラス・マホガニー製のケースには、横浜にちなんだカモメの彫刻が施されています。

輝くような明るい音色にふさわしく、「光」を意味するラテン語“lux”に由来する"ルーシー"という愛称で親しまれる、横浜みなとみらいホールのシンボルです。

この楽器は、現代のコンサートホールにおけるオルガンの理想を追求して設計されているため、バッハ以前の時代から現代に至る多種多様なオルガン曲を、それぞれにふさわしい音色で演奏することができます。 

また、建設計画のごく初期の段階からオルガンを響かせることに配慮して建築設計が進められてきただけに、ホール全体が一つの楽器のように共鳴し、客席ではあたかもオルガンの音色に包まれているように感じられます。

パイプは全部で4,632本。正面に見えているパイプのほか、奥行き3.6mの4層になった内部に、材質も形も大きさも様々なパイプがびっしり並んでいます。木のパイプはポプラ材、金属のパイプは鉛と錫(すず)の合金です。

音色を選ぶストップは62個。その他にも実物が組み込まれている「チェレスタ」や、鈴を組み合わせた「ツィンベルシュテルン」、鳥の鳴き声に似た「ナイチンゲール」といった音色も備わっています。また、音色の組み合わせ(レジストレーション)を記憶するコンピュータのメモリーが内蔵されています。

パイプオルガンストップ表 275KB
外形寸法 高さ11.22m×幅12m×奥行き3.6m
パイプ本数4,632本
ストップ数 62ストップ+チェレスタ、ナイチンゲール、ツィンベルシュテルン
鍵盤数 第1〜第3手鍵盤:各61鍵、ペダル:32鍵
調律法 平均律

C. B. フィスク社

アメリカにおける現代オルガン建造のパイオニア。1961年、チャールズ・ブレントン・フィスクによって、ボストン近郊のグロースターで設立された。全米各地の教会や音楽大学、コンサートホールは元より、国外でもスイス、日本で優れた実績を持つ。
横浜みなとみらいホールのオルガンOp.110は、第3代社長スティーヴン・ディーク氏を中心としたチームの手で1991年に設計が開始され、ホールへの設置後1年あまりに及ぶ整音作業を含め、7年の歳月を経て完成した。

ホールオルガニスト

近藤 岳(こんどう たけし)
オルガニスト、作・編曲家。
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。同大学別科オルガン科修了。同大学大学院修士課程音楽研究科(オルガン)修了。2006年文化庁新進芸術家海外研修員としてフランス(パリ)に留学。
国内外でのオルガンリサイタル等のソロ演奏に加え、アンサンブルや国内主要オーケストラとの共演、他ジャンルのアーティストとのコラボレーションなど、その活躍の場は多岐にわたっている。オルガニスト・作曲家として、オルガンを中心としたジャンルの自作自演、コンサートホール、文化事業財団等からの委嘱作品も数多い。また、邦人作曲家からの信頼も厚く、数々の邦人オルガン作品やアンサンブル作品の初演も手がけ、いずれも好評を博している。2004年7月ミューザ川崎シンフォニーホールのオープン当初から18年3月末までホールオルガニストを務めた。
2020年に刊行されたオルガン教則本『オルガン奏法 パイプでしゃべろう! パイプで歌おう!』(道和書院)の編著者を務め、各方面から高い評価を得ている。
現在、東京藝術大学非常勤講師。国立音楽大学非常勤講師。(一社)日本オルガニスト協会会員。2022年度より2代目の横浜みなとみらいホール ホールオルガニストに就任。

ホールオルガニストとは・・・

パイプオルガン“ルーシー”にとって、欠かせない存在。
その任務の中でも基本となるのは、普段からパイプオルガンをチェックして、良い状態を保つ「オルガン・メンテナンス」です。様々なストップにまんべんなく空気を通すことができるように演奏しながら、響きや音量、アクションなどに違和感がないか確認します。そのような日常的なメンテナンスを通じて、コンサートを迎えるためにベストな状態を維持しているのです。
また、初めて横浜みなとみらいホールのパイプオルガンを演奏するオルガニストに、オルガンの使用方法や特性を説明するなど、他のオルガニストがスムーズに演奏できるようバックアップすることも、役割のひとつです。
さらに、ホール主催のパイプオルガン事業へのアドヴァイスはもちろん、運営や広報協力にも携わり、ともにコンサートを作り上げていく、ホールにとって大切なパートナーです。
また、横浜みなとみらいホールでは、若手のオルガニストを対象に、ホールオルガニストとして求められる様々な役割を体験し、実地に訓練していただく「ホールオルガニスト・インターンシップ・プログラム」を2002年度より実施しています。
初代ホールオルガニスト[1998-2020] 三浦はつみ
第2代ホールオルガニスト[2022-] 近藤 岳

ホールオルガニスト・インターンシップ・プログラムについて

パイプオルガンのコンサート