コラム

「令和6年度 心の教育ふれあいコンサート」
音楽で心が一つになる横浜市ならではの小学生の鑑賞体験

2024年10月11日 (金)

文 三宅 智恵(横浜市教育委員会事務局 学校教育企画部小中学校企画課 指導主事)
写真 平舘 平

「心の教育ふれあいコンサート」は、将来を担う子どもたちの感性や創造性を育むため、優れた文化芸術に接する機会として、横浜みなとみらいホール誕生の年でもある1998年に始まった横浜市教育委員会の事業で、ホールと共に歩んできたともいえるコンサートです。

市立小学校、特別支援学校等を対象としたこのコンサートは現在、年一回10日間20公演実施されています。オーケストラを鑑賞することで音楽的な感性を磨き、心豊かに生きていこうとする資質や能力を育むことを目的の一つとしており、約30,000人(教職員を含む)の児童が一般の方と一緒に鑑賞します。 
曲目はこれまでの小学校学習指導要領で示されてきた鑑賞教材や、教科書に掲載されている曲、横浜みなとみらいホールが誇るパイプオルガン「ルーシー」が活躍する曲など、クラシックの王道といえる曲が60分間の中に凝縮されています。

ホールでクラシックを聴くのは初めての子どもたちばかり。本事業での目的の二つ目としては、豊かな音楽を十分に味わいながら鑑賞のしかた、マナーを学ぶ機会ともしています。私が一番子どもたちに伝えていることは音楽の余韻について「音が鳴りやんだ後も音の行方を追いかけてみよう。」です。ここは音が鳴りやんだ後も極上の響きが残るホールです。子どもたちは音の行方を最後まで感じようと真剣に聴いています。

コンサートの場面を少しご紹介します。私は舞台に出演する神奈川フィルハーモニー管弦楽団、指揮者の皆様をステージ下手で見送った後、司会やスタッフの方々と舞台袖のモニターで一曲目を聴くことにしています。モニターには指揮者、コンサートマスターと、1列目から3列目くらいまでの子どもたちが映し出されているからです。 始まりは「交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』」(R.シュトラウス)。映画「2001年宇宙の旅」にも使われた、あまりにも有名な曲の冒頭部分です。 指揮者が構えると、身を乗り出して聴こうとする子どもたちの姿が見えます。パイプオルガンの音、振動に隣の仲間と顔を見合わせる子ども、その後にくる大編成のオーケストラの壮大な響き、ティンパニの衝撃的な鳴りで椅子から飛び上がらんばかりにびっくりして、手を握り合ったり喜び合ったりしています。最後の曲まで子どもたちは音を全身で受け取り、心から音楽を楽しみ、大きな拍手を舞台に送ります。 

演奏終了後の子どもたちからは「私は、生で『威風堂々』を聴いてみたくて、楽しみにしていました。生で聴いたら力強くて、言葉にならないくらいすごかったです。こういうコンサートで聴くと、心が豊かになると思いました。」や「一生に一度のチャンスかもしれないものを、みんなで見ることができて良かった。」「この感動をみんなに伝えて、世界の人の心が豊かになったら良い。」など、たくさんの嬉しい声をいただいています。

また、今年ふれあいコンサートに参加する学校に通うご家庭の方から聞いたことですが、学校で事前学習を受けた子どもが「行進曲『威風堂々』第1番」(E.エルガー)をコンサートホールで聴くことをすごく楽しみにしている、とのことでした。先生方が音楽のよさ、すばらしさを子どもにわかりやすく伝えているのでしょう。「心の教育」というタイトルはこういうところからもきているのではないかと改めて感じました。

音楽は集まった人の心を瞬時に掴み、一体感を生む力があります。今年も「心の教育ふれあいコンサート」会場で一斉に集う出会ったばかりの仲間、同じ学校の友だち1,500人がここでしか感じることのできないオーケストラやパイプオルガンの響き、音楽を肌で感じ、心を一つにして感動を共有する姿が見られるに違いありません。


チケット発売情報
市民の皆様にも「心の教育ふれあいコンサート」の一部座席を販売しています。クラシックの名曲の数々を、わかりやすい解説を交えてお手ごろな料金でお楽しみいただけます。ご来場をお待ちしております。
「令和6年度 心の教育ふれあいコンサート」
会場:横浜みなとみらいホール 大ホール
【第1クール】2024年 10月1日(火)、2日(水)、3日(木)
【第2クール】2024年 10月8日(火)、9日(水)、10日(木)、11日(金)
【第3クール】2024年 10月16日(水)、17日(木)、18日(金)
1日2公演①午前の部 10:30開演(10:00開場)/②午後の部 13:30開演(13:00開場)
料金:3Fエリア限定自由席:1,300円(65歳以上・学生、障がい者手帳をお持ちの方:700円)
詳細はこちらをご確認ください。