『アンドリス・ネルソンス指揮/ボストン交響楽団』中高生のための公開リハーサル 事前ガイド 前編
2022年9月20日 (火)
※本文は2022年11月9日(水)「アンドリス・ネルソンス指揮ボストン交響楽団」公演の際に行われる関連企画「中高生のための公開リハーサル」時に配布される解説文章です。
この度、『アンドリス・ネルソンス指揮/ボストン交響楽団』の開催にあたり、指揮者やオーケストラをはじめ様々な関係者のご協力により、中高生のための公開リハーサルを実現する運びとなりました。ここでは、参加のみなさんにこの公開リハーサルをより楽しんでもらえるよう、演奏者や本公演についての豆知識を紹介いたします。
コンサートホールは、クラシック音楽を聴くに最高!
さて、今回の会場である横浜みなとみらいホールに初めていらっしゃる人もいるかもしれませんね。当ホールは1998年に開館いたしました。大ホールのステージ後方には巨大なパイプオルガンが設置されていますが、このオルガンは、今回出演するオーケストラ「ボストン交響楽団」の所在する都市・ボストンの近郊にあるグロスター市からやって来ました。そして今ではソロやオーケストラとの共演など、その存在感は当ホールの象徴となっています
横浜みなとみらいホールはいわゆるコンサートホールです。かつて多目的ホールに代表されるプロセニアム・アーチ(額縁のようなもの)を持つホールが主流でしたが、舞台面と客席を仕切るプロセニアムのないシンフォニーホールが、1982年に大阪で誕生しました。これが国内初の大型コンサートホールの始まりです。人々の文化水準が向上するにつれ、より良い音響で本格的な音楽を楽しみたいという聴衆の欲求に応え空間全体を効果的に響かせることを重視したホールが生まれたのです。そしてこのような楽器の生演奏を聴くことを大事にしたホールはコンサートホールと呼ばれるようになりました。≪額縁≫を通して観賞する従来のプロセニアム型のホールでは舞台上部に設置されている美術や照明バトンを隠れせるので、視覚的要素が重要なバレエやオペラ、演劇の公演に適していますが、ステージ空間と客席空間が遮られるので音響的には不利だったのです。1986年に首都圏で初めてサントリーホールが設立され、その後オペラシティや東京芸術劇場など次々にコンサートホールが誕生するようになります。神奈川では大型のコンサートホールとして横浜みなとみらいホールが1998年に、ミューザ川崎シンフォニーホールが2004年にオープンいたしました。今回は演奏者の音だけではなく、ぜひホールの響きにも着目してください。


アメリカオーケストラ Big ファイブ
この通称「Bigファイブ」は1960年頃からアメリカのマスコミの間で使われその後音楽ファンの間に定着した言葉で、アメリカのメジャーオーケストラ5団体をさします。ボストン響の他に「ニューヨーク・フィルハーモニック」、「シカゴ交響楽団」、「フィラデルフィア管弦楽団」、「クリーヴランド管弦楽団」というトップレベルのオーケストラが挙げられ、その芸術性の高い演奏を生で聴くことは日本のクラシックファンにとってまさに「至福のひととき」なのです。
ボストン交響楽団は、1881年に実業家のヘンリー・リー・ヒギンソン(1823-1911)が創設いたしました。社会を豊かにするためにヨーロッパのレベルに匹敵するようなオーケストラが必要と考えられたからです。アメリカ社会では芸術文化と生活には密接な結びつきがあるという考えから、歴史的にも様々な芸術団体が篤志家を中心にした寄附によって支えられています。1929年頃から始まった「大恐慌」にも関わらず、インディアナポリス交響楽団(1930年)、ワシントン・ナショナル交響楽団(1931年)が相次いで創設されたのは、「暗い時代だからこそ芸術文化で心を豊かに」という考えがあったからのように思われます。「不況だから芸術文化の支援を切る」という考えとは全く真逆ですね。
このように多くの人々の支持を得られているからこそアメリカが“オーケストラ大国”と言われる所以ですが、その代表的な存在であるボストン交響楽団の初来日は1960年のことでした。横浜では同年5月20日に神奈川県立音楽堂で演奏会が開催されています。シャルル・ミュンシュ(1891-1968)の指揮で、バーバー《メディアの瞑想と復讐の踊り》、ドビュッシー交響詩《海》、ブラームスの交響曲第2番が演奏されました。前半の2曲は、管楽器や打楽器もそこそこの人数が必要とされるので、音響は素晴らしいけれど、狭い音楽堂でどのように大人数のオーケストラが演奏したのかがとても興味深いところです。因みにドビュッシーの交響曲《海》は、作曲者本人の希望により初版(1905年)のオーケストラスコアの表紙に葛飾北斎の《神奈川沖浪裏》の絵が描かれたことは有名です。もしかしたらコンサートツアーの合間に実際に神奈川区の海を眺めに行ったボストン響の楽団員もいたかもしれませんね。

前編はここまで!後半に続きます。
文:横浜みなとみらいホール事業企画グループ
佐々木真二、飯島玲名
イラスト:伊藤浩平
KDDI スペシャル
アンドリス・ネルソンス指揮 ボストン交響楽団
【公演情報】
https://yokohama-minatomiraihall.jp/concert/archive/recommend/2022/11/2416.html
日時:2022年11月9日(水) 19:00開演(18:20開場)
【中高生のための特別プログラム】
https://yokohama-minatomiraihall.jp/concert/archive/recommend/2022/11/2433.html
日時:2022年11月9日(水) 17:00開始予定
会場:横浜みなとみらいホール 大ホール
曲目:マーラー:交響曲第6番 イ短調
主催:横浜みなとみらいホール(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)、公益財団法人サントリー芸術財団
共催:横浜アーツフェスティバル実行委員会
特別協賛:KDDI株式会社
後援:アメリカ大使館