[2026年度コンサートカレンダー春号掲載]
オリヴィエ・ラトリー(オルガニスト)インタビュー
2026年3月5日 (木)
私自身の心に響く多彩な作品を ~"LUCY(ルーシー)"との初リサイタルに寄せて~
聞き手:近藤 岳(横浜みなとみらいホール ホールオルガニスト)
構成:飯田有抄(音楽ファシリテーター)
世界屈指のオルガニスト、オリヴィエ・ラトリーがこの春、横浜みなとみらいホールに初登場する。パリ・ノートルダム大聖堂の正オルガニストとして30年以上にわたり第一線で活躍し、即興演奏の名手としても知られる巨匠だ。今回、ホールオルガニストの近藤 岳が、敬愛するラトリーにメールインタビューを敢行。日本への想いや、今回のプログラムの着想などを聞いた。
——リサイタルのプログラムは、バロックからロマン派、そして近現代や即興演奏まで幅広い曲目です(没後40年を迎えるM.デュリュフレの曲目も!)。こだわりや聴きどころなどをお聞かせください。
このプログラムは、私自身のオルガン音楽の好み(バッハ、ロマン派、近現代)と、皆さんに楽しんでいただけるような多様な色彩とスタイルを組み合わせたもので、私自身の心に響く作品を選びました。演奏者自身が深く音楽に感動しているときにこそ、聴く人々の心を動かすことができると思うのです。横浜みなとみらいホールのオルガン”LUCY(ルーシー)”を弾いたことはまだありませんが、私がこれまで触れてきたフィスク社のオルガンを通じて、どのような音楽が最も美しく響くかを想像しながらプログラミングしました。
——ラトリーさんは、これまでにたびたび来日されていますが、印象に残っている公演はありますか?
忘れられない思い出がたくさんあります。1994年の新宿での初来日公演はもちろん、私の誕生日に白根(桃源文化会館・山梨県)で行ったコンサートも特別でした。終演後、客席の皆さんが「ハッピーバースデー」を歌ってくださったのです。2年連続で行ったバッハ・プログラムの公演や、NHK交響楽団と東京芸術劇場で共演したプーランクの協奏曲も強く印象に残っています。サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現・セイジ・オザワ松本フェスティバル)で小澤征爾さんに初めてお会いしたことも、忘れがたい思い出です。
——日本では1871年に横浜で初めてオルガンが建造され、教会やミッションスクールに急速に広まりました。公共ホールへの導入からも50年以上経った現在、日本のオルガン文化をどうご覧になりますか?
日本はコンサートホール・オルガンの分野で、多くの国の模範となっています。フランスでは、オルガンを備えたコンサートホールは3つしかありません。日本では「教会の楽器」という先入観にとらわれず、ピアノやオーケストラと同様に、オルガンをひとつの独立した楽器として体験し、親しむ環境が整っています。ただ、その恵まれたオルガンが十分に活用されていないとも感じます。丁寧なプログラム作りと、長い時間をかけた取り組みが必要でしょう。
——世界を飛び回る演奏活動の合間で、オフの時はどのように過ごされていますか?
音楽家であることは、私にとって「仕事」ではなく天職です。止まることはできません。練習量を少し減らす日があっても、音楽は常に頭の中に流れています。もちろん、人生の中には音楽以外の喜びもあります。それでも私の中での「ハーモニー(調和)」は、常に音楽から立ち上がり、どんなときも音楽へと帰っていくのです。
——今後の音楽活動やプロジェクトのアイデアはありますか?
まだ夢の段階のアイデアがいくつもあります。それらを形にするには、もう少し時間が必要でしょうね。
準備が整った暁には、ぜひ日本でも取り組むことができたらと願っています。
横浜に鳴り響く巨匠ラトリーの「ハーモニー」を、ぜひ会場で分かち合いたい。
オリヴィエ・ラトリー | パイプオルガン
フランスのオルガニスト。オルガンの世界的アンバサダーとして知られており、世界中の一流ホールで演奏し、著名指揮者が指揮する主要オーケストラに客演。重要なレーベルに録音を残し、多数の作品の初演を果たしてきた。23歳にしてパリ・ノートルダム大聖堂のオルガニストに就任。2012年からはモントリオール交響楽団の名誉オルガニストを務める。世界中で最も抜きん出た、思慮深く冒険心に富んだ音楽家である。即興演奏でも卓越した才能を発揮しており、オルガン音楽のあらゆる可能性を切り拓いている。フランス・オルガン作品に強い関心を持っており、ドイツ・グラモフォンにオリヴィエ・メシアンの全オルガン作品を録音。パリ、ロンドン、ニューヨークでリサイタルも開催した。またセザール・フランクの作品もドイツ・グラモフォンに録音。ガストン・リテーズに学んだラトリーは、2024年までパリ国立高等音楽院で教鞭を執っていた。また世界中の数限りない賞を受賞している。2000年にはシモーヌ・デル・ドゥーカ財団賞受賞。2006年、ノース&ミッドランズ音楽学校「名誉学位」。2007年、英国王立音楽院「名誉学位」。2009年4月にアメリカ・オルガニスト協会の年間国際演奏家賞、2010年にはモントリオールのマギル大学より名誉音楽博士号を授与された。
■公演情報
横浜みなとみらいホール オルガン・リサイタル・シリーズ49
オリヴィエ・ラトリー オルガン・リサイタル
2026年4月29日(水・祝) 14:00開演(13:20開場)
会場:横浜みなとみらいホール 大ホール
詳細:https://yokohama-minatomiraihall.jp/concert/archive/recommend/2026/04/4280.html