[2023年度コンサートカレンダー秋号掲載]
石田泰尚(ヴァイオリニスト)インタビュー
2023年9月6日 (水)
ゆく年は、石田組とシブく!楽しく!
取材・文:宮本 明
写真:蓮見 徹
1年を締めくくるスペシャルなコンサート「石田組年末感謝祭」が帰ってくる。
“組長”石田泰尚に聞いた。

昨年の大晦日に初開催した、この年末感謝祭。
「『ジュニア』の子たちがほんと可愛くて。楽しかったです」
まずは、共演した子供たちの話から。公演のために結成した10歳以下の小さな組員たち『石田組ジュニア』のことを、とても嬉しそうに振り返った。
「彼らもリハーサルの時から楽しくてしょうがなかったみたいで。顔やテンポに出てました。去年みたいに満員のお客さんの前でやるのは貴重な経験だし、今後にも生きるんじゃないかと思います。みんな、また出たい出たい!って言ってましたね」
もちろん今年も「ジュニア」が一緒。あらためて新メンバーで編成される。
しかし「同じことは絶対にやらないです」という石田組長だけに、「感謝祭」全体はさらにパワーアップされている。
「今年は昼夜2回公演。たぶんまったく別々のプログラムになると思います。メンバーもみんな喜んで、けっこう軽い感じで『やっちゃいましょう!』みたいなこと言うんですけど……。たぶんツラさがわかってない!石田組の2回公演って、ハンパなく疲れるんですよ。いや、とにかく楽しいので、変な疲れではないんですけれどもね。けっこうきついです。僕なんか、終わる頃には変な顔色になっちゃって(笑)」

年末感謝祭のスペシャルはもうひとつ。
通常13人編成の石田組を、昨年は初めて18人に増強。今年はさらにコントラバスを1人増やして19人で演奏する。
「去年やってみて、各1パートに1人ずつ多いだけでこんなに厚みが違うんだと。すごいよかったですよね。
今年もそのまま18人で行こうと思っていたら、横浜みなとみらいホールの新井鷗子館長から、『京都交響楽団のコントラバスのジュビさん(出原修司)が入るともっと華やかになるんじゃないかしら』と言われて。僕は京響の特別客演コンサートマスターもやらせてもらっているので、じゃあちょっと聞いてみますと。ジュビさんがOKしてくれたので、1人増えて19人になりました。さらに低弦が厚くなる。全然いいですね」
石田組のメンバーは公演ごとに異なる。
核となる常連奏者はいるものの、いつも石田が自分で声をかけて、ベテランから若手まで、個性豊かな顔ぶれを集める。
「よく乗っているメンバーが、『うちのオケにめっちゃ乗りたがってる若手がいる』と連絡先を教えてくれたり。そうすると僕の場合は、すぐに連絡するので。
自分で言うのも恥ずかしいんですけれども、間違いなく自分と一緒に音楽をしたいというやつらが集まっていると思っています。一人ひとりが素晴らしい音楽家なので、僕の弾いているさまとかを見て、僕がやりたい音楽をすぐ察知してくれるのがたまらないですね。ただし僕は、石田組は全員が主役だと思っているので、小さくなって弾くのではなく、みんなでわーっと弾こうよみたいな感じです」
リハーサルでは若手も含めて活発に意見を交わす。
「初めて来たやつにも、急に『どう?』とか聞いたりします。遠慮しないでくれ、みたいな。だから、たまに全否定されることもありますよ(笑)。『いやいや石田さん、そこはこうしたほうがいいんじゃないですか?』って言われると、けっこう僕、それに従っちゃうんですよね。『おっ、おお…。じゃあ、そうしようか』みたいな(笑)。みんな、普段の仕事をストレスを、石田組でけっこう発散できていると思うんですね。お客さんにはそんなところも見てほしいなと思っています」

来年10周年を迎える石田組。スタートした2014年の結成公演も横浜みなとみらいホールだった。
神奈川フィル・コンマスとしても頻繁に演奏し、このホールを知り尽くしている。
「音はもともと良かったですけど、昨年のリニューアルオープンで、よりまろやかになったと感じます。舞台の後方にも席があって、360度お客さんに見られているのが、僕は大好き。後ろの客席も楽しませてあげたいと、つねに意識しています」
年末年始の過ごし方を尋ねてみた。
「大晦日は、コンサートをやっていることもけっこうありますけど、家にいることもありますよ。ずっとテレビを見て、だらだらっと。大掃除はしないですね。僕、きれい好きなんですよね。普段からぴっとしているので、年末だから大掃除というのはないんです。
年明けの初詣は絶対に行きますね。子供の頃から家族と一緒に行っていたお寺に必ず。今年も大活躍できますように。よろしくお願いしますと」
プログラムにはリクエスト・コーナーも。クラシックからロックまで、石田組のおなじみのレパートリーが、ファンの投票で選ばれる。
事前にインターネットで投票するシステムなので、ホールのHPを要チェック。
「大晦日なのにお客さんがわざわざ来てくれる。本当に楽しんで帰ってもらえればということに尽きますし、こっちもいつも以上に気合を入れて、お客さんと一緒に盛り上がりたいですね」
石田泰尚
いしだ・やすなお|ヴァイオリニスト
神奈川県出身。国立音楽大学を首席で卒業、同時に矢田部賞受賞。新星日本交響楽団 コンサートマスターを経て、2001年神奈川フィルハーモニー管弦楽団ソロ・コンサー トマスターに就任。以来“神奈川フィルの顔”となり現在は首席ソロ・コンサートマ スターとしてその重責を担っている。これまでに神奈川文化賞未来賞、横浜文化賞文 化・芸術奨励賞を受賞。結成時から20年以上参加するYAMATO String Quartet、自身がプロデュースした弦楽アンサンブル“石田組”など様々なユニットでも独特の輝きを見せる。
2018年には石田組がNHK-FM「ベストオブクラシック」およびBSプレミア ム「クラシック倶楽部」で放送されその熱いステージの模様は大きな反響を呼び、2019年にはEテレ「ららら♪クラシック」で特集が組まれた。
2020年4月より京都市交 響楽団特別客演コンサートマスターを兼任。2022年6月に初の著書となる「音楽家で ある前に、人間であれ!」を刊行。2023年には石田組のアルバム『石田組 2023・ 春』、『石田組 2023・夏』を連続リリース。
使用楽器は1690年製 G.Tononi、1726年製 M.Goffriller。

■公演情報
石田組 年末感謝祭 2023
2023年12月31日(日) 14:00開演(13:20開場)/18:00開演(17:20開場)
会場:横浜みなとみらいホール 大ホール
詳細:https://yokohama-minatomiraihall.jp/concert/archive/recommend/2023/12/3107.html