インタビュー特集 #2 ホールレセプショニスト
2020年11月10日 (火)
1998年の開館からこれまでの歴史を振り返るインタビューシリーズ第2弾。2回目は、2001年より現在の職務に就いているレセプショニスト4期の石原まゆみ、高野瀬栄子、山賀佳玲の3名に話を聞きました。
大ホールホワイエにて(左から高野瀬栄子、石原まゆみ、山賀佳玲)
全てのお客様を最善のサービスでお迎えしたい
「私たちレセプショニストは、主に当館へご来場されるお客様の接客を担当しています。クロークでお荷物をお預かりし、入場チケットの確認、もぎり、座席のご案内、客席ドアの開閉、そして終演後はお客様の誘導と見守り、客席のチェック、後片付けと、お客様の入館から退館までをご一緒します。公演によって制約やお客様も異なりますので、当日の状況で臨機応変に対応する必要があります。全てのお客様に等しくサービスを提供できるよう常に最善を尽くすことを念頭に置いて職務に就いています。」(T)
クロークにて
「公演前、迅速かつ正確なお預かりに緊張します。」
仕事との出会いは人それぞれ
「私はもともと転勤族で福岡から横浜へ家族とともに越してきた際に、新聞で募集案内を見つけました。大学生の頃にすでに東京のコンサートホールでレセプショニストを経験していましたので、この仕事の楽しさを知っていたこともあって、応募を決めました。」(Y)
「開館当初から募集があったのは知っていて、魅力的な仕事だと思っていたのですが、子どもが小さかったこともあり、応募を見送っていました。数年経って、たまたま横浜の祖母の家に帰った際に再度募集案内を発見。その頃は夫の仕事の関係で札幌に住んでいたのですが、横浜へ帰ることも決まっていたことと、子どもも手を離れる年齢になっていたことも重なって、家族には内緒で勝手に(!)応募しました(笑)。子どもはお母さんが働く、ということが相当嬉しかったようで、面接のときも『頑張ってね!』と声をかけてくれました。」(I)
「私は近くのホテルで食事をした帰りにホールのチケットセンターを通りがかり、募集案内を見て応募しました。それまで社会人としての経験がなかった私でも、これならできるかも、と思ったんですよね。もちろん、実際はそんな単純な仕事ではなかったのですが(笑)」(T)
大ホールエントランスにて
「ホールのお客様だけでなく一般の方々のための案内所です。」
忘れもしないエピソード
「働き始めて5年ほど経った頃、大ホールで、ある外国人のピアノ・リサイタルがあり私は3階客席周辺を担当していました。お客様が入場され、静寂な中で無事にリサイタルがスタートし、ホッとしたのも束の間、一曲目、静寂の中に3階の客席ドアから風切り音が・・・。実はピアニストの意向で公演中の空調が止められていて、客席外との空気圧の関係で風切り音が発生してしまっていたのです。そのため、その後公演中は音がしないように終演までずっとドアを押さえ続けました。最初は手を使って押さえていたのですがだんだん疲れてきて、最後はあの手この手を使ってドアを押さえ、とにかく音が鳴らないように!と耐えました。それがトラウマのようにあって、それからというもの風切り音にはもちろん敏感になりましたし、この一件はとても忘れられないです。」(I)
大ホール・客席ドアの前で
「丁寧なお客様のご誘導のために、レセプショニスト同士の緻密な連携も求められます。」
「それから、横浜みなとみらいホールの名物、『オルガン・1ドルコンサート』の満席公演。(2006年6月28日100回記念公演他)全席自由で一席も空席なし!レセプショニスト同士で連携を取り合って、空席情報を共有し、お客様を誘導したんです。びっちりと埋まった客席は見るだけで壮観で、達成感とともにスタッフみんなで喜びを分かち合いました。」(T)
「その他にも数えきれないほどエピソードはありますが、どれをとってもレセプショニスト同士の仲の良さがあるからこそ、と思います。年末恒例のジルヴェスターコンサート後に初日の出をみんなで見に行ったり、レセプショニスト1期が卒業する際にはホールステージ上で、みんなで記念写真を撮ったりもしました。長くこの仕事を続けていらっしゃる方が多いのも、この理由が大きいと思います。レセプショニスト同士の人間関係はお客様をお迎えするときに絶対に出る部分。この温かいムードはずっと大事にしていきたいですね。」(T)
大事にしてきたこれまでの記念写真
リニューアル後は、もっと愛されるホールに
「今後横浜に新しいホールや施設が出来るという話もありますが、この横浜みなとみらいホールはより一層皆様に愛されるホールとして戻ってきてほしいと思っています。20世紀に建設されたホールということで、どうしてもバリアフリーの要素が足りないかな、と思うところもあったのですが、今回の長期修繕ではその部分も改善されると伺っています。バリアフリーの充実した施設で、幅広い世代の皆様と再びお目にかかれることを心より楽しみにしております。」(Y)
取材時の一コマ。一つ一つの返答からも20年近く紡いできたレセプショニスト同士の絆が伺えました。
取材・文:横浜みなとみらいホール広報チーム
写真:平舘 平
題字デザイン:秋澤一彰