[2026年度コンサートカレンダー夏号掲載]
石田泰尚(ヴァイオリニスト・プロデューサー)インタビュー
2026年6月5日 (金)
任期ラストイヤー、新たな挑戦へ
取材・文: 飯田有抄
写真:平舘 平
横浜みなとみらいホールの「プロデューサー in レジデンス」として2年目のシーズンを迎えたヴァイオリニスト・石田泰尚。初年度の手応えと新たな挑戦を胸に、2026年度のラインナップを語ってもらった。
石田組メンバーによる室内楽シリーズ「サロンdeストリングス」は、シューベルトの傑作で統一した全3回。初年度は出演メンバーに選曲を任せたが、今回は石田自身がプログラムを選んだ。弦楽五重奏曲(5月に終了)から、ピアノ五重奏曲《鱒》、弦楽四重奏曲《死と乙女》などを披露する。「初年度に出演していない組員たちが登場します。まだまだいっぱいいるんで」と笑みを浮かべる言葉に、石田組の層の厚さがうかがえる。

昨年、中高の弦楽合奏部を訪問した「弦楽合奏部応援プロジェクト」は、2年目から一般大学の弦楽サークルにも対象を広げる。初年度の指導を振り返り、「とにかく学生たちはとても緊張していて、ガチガチでしたね」と石田は笑う。指導のスタイルは言葉より演奏で伝えること。「弾いて聴かせた方が早いと思うのです。技術的なことを伝えようと思えば、どれだけ時間があっても足りませんから、とにかく演奏することの楽しさを伝えたいと思いました。音でやり取りをしていくと、だんだんと緊張がほぐれていくのが伝わり、やはり音楽で反応してくれるのが一番嬉しかったですね」。こうした指導の経験は、石田自身にも新鮮だった。「教えるのは、とても体力がいります。日頃から指導している方を本当に尊敬します」。
年末恒例となった「石田組 年末感謝祭」も、2026年12月30日・31日の2回公演で開催される予定だ。

2027年2月には、プロデューサー任期の集大成ともいえる「石田組オーケストラ」の公演が開かれる。弦楽器のみのアンサンブルの石田組を、管楽器も加えたフルオーケストラへ拡大する。「プロデューサーの話をいただいた時、真っ先に浮かんだのがオーケストラ企画でした。オーケストラは人集めも大変だし費用もかかりますが、『今しかない』と、思いきって企画しました。メンバーは僕がすべて声掛けをして集めます」と力強い。ゲストソリストには深く敬愛する徳永二男を迎え、J.S.バッハの《2つのヴァイオリンのための協奏曲》で共演する。国立音楽大学時代、卒業演奏会で同じ作品を恩師・徳永と演奏した思い出があるという。「室内楽の授業でお世話になり、とにかくリスペクトしている先生です。久々に共演させていただくのは楽しみというか、恐縮です」とはにかむ表情に、特別な思いがにじんだ。またこの日は、作曲家・加藤昌則による委嘱新曲のヴァイオリン協奏曲も披露される。「あまり難しくなく(笑)、聴き映えのする曲を書いて、と言ってあります」。指揮を務めるのは、石田とは旧知の仲でもある清水醍輝。「彼とともに石田組のカラーが隅々まで行き届いたオーケストラにしたい。そこは自分にかかっていると思っています」。
3月のリサイタルでは、これまでも共演を重ねてきたピアニスト津田裕也とブラームス、シューマンのソナタ全曲に挑む。「津田さんは僕が深く信頼している音楽家で、そこにいるだけですべてを分かり合えるような存在です」。息の合ったデュオよる濃密な演奏に期待が膨らむ。

プロデューサーとしての初年度を終え、石田はこう語る。
「プロデュース業は自分一人で考えて実現できるものではありません。共演者やホール、マネージャーとの対話から企画を練り上げる経験は、同じく全体をまとめる仕事でも、コンサートマスターとはまた異なる経験ができています」。
任期ラストイヤー、石田の取り組みは、さらなる広がりを見せていく。
石田泰尚
いしだ・やすなお|ヴァイオリニスト・プロデューサー
神奈川県出身。国立音楽大学を首席で卒業、同時に矢田部賞受賞。新星日本交響楽団コンサートマスターを経て、2001年神奈川フィルハーモ ニー管弦楽団ソロ・コンサートマスターに就任。以来“神奈川フィルの顔”となり現在は首席ソロ・コンサートマスターとしてその重責を担っている。 これまでに神奈川文化賞未来賞、横浜文化賞文化・芸術奨励賞を受賞。結成時から30年参加するYAMATO String Quartet、自身がプロデュー スした弦楽アンサンブル“石田組”など様々なユニットでも独特の輝きを見せる。2020年4月より京都市交響楽団特別客演コンサートマスター (2025年4月よりソロ・コンサートマスター)を兼任。2022年に初の著書となる「音楽家である前に、人間であれ!」を刊行。2025年4月より横浜 みなとみらいホール「プロデューサー in レジデンス」第3代プロデューサーに就任。使用楽器は1690年製 G.Tononi、1726年製 M.Goffriller。

■プロデューサー in レジデンス 石田泰尚
期間:2025年4月~2027年3月
プロデュース事業の詳細:https://yokohama-minatomiraihall.jp/enjoy/producer2025.html